カミングアウト 体験談 連載

自分を肯定できるようになったまで(大学編)

自分を肯定できるようになったまで(大学編)
撮影者: Leon

大学1年の春はふみのことを時々思い出しながら留学の試験準備であっという間に過ぎた。私は夏休み明けからレストランでバイトを始めた。キッチンで採用になったが私は不器用なので初めの頃は1つ上の赤城先輩(仮:スラダンの赤城さんに似ている)をよくイライラさせてしまった。

「ちょっとそれはないでしょ!てめーも初めはゴミみたいな料理作ってただろうが!!」

赤城先輩のイヤミに見かねたホールの女の先輩が私を助けてくれた。これが私と奥寺先輩(仮; セクシーで自由な女の人って感じのところが「君の名は」の奥寺先輩そのもの)の出会いだった。奥寺先輩のお陰で私はバイト先にも馴染み、料理も上手くなった。赤城先輩とはすごく趣味が合った。奥寺先輩は看護学生で、「これって食いっぱぐれない仕事でしょ?男に頼らなきゃ生きていけないっていう風にはなりたくないの。」と言うように、先輩は私と違っていつも堂々として、ものをはっきりと言った。私は無い物ねだりか、そこに憧れるようになった。

「あのさあ、Leonはもしかして奥寺先輩のことが好きなの?」
話を聞いた大学の友達に言われた。この子は年上でいつもやけに落ち着いていた。
私は嘘がとても下手だ。バレてるなら、と思い白状すると、
「私も中学校のとき親友のこと好きになったよ。なんか強い女の子って逆に守りたくなるところもあるよね。」
自分だけじゃなかった。通勤時間帯の駅のように皆が真っ直ぐに歩いていく世界で自分だけが途方にくれて迷っていると思ったら、違った。

「真っ当に恋に落ちて家庭を築くこともないのか、一生ひとりなのかなって多分あなたと同じように思ったことあるよ。異性愛者として。実はね学費のためにずっと夜の仕事してるの。それで虚しくなって寂しい気持ちになると1人になりたくなくて数え切れない人と、色々した。でもずっと誰かと居たい訳じゃないの。」
彼女は褒められるようなことをしている訳ではないが、頼もしささえ感じた。

赤城先輩から遊びに誘われることが増えた。
彼と居ると楽しいが奥寺先輩とシフトが一緒の3時間の方がよっぽどドキドキすることに気づいた。
どうやらこの環境で恋をしていたのは私だけではなかった。客のピークが落ち着いてゴミ捨てに外に出ると店長とパートが抱き合っていた。
よく考えるとその2人は不自然に一緒にいて、奥寺先輩はずっと前から知っていたという。
「誰が誰を好きでも良い世の中だよね、だって無理して好きになる人を変えられないでしょ?でも不倫は誰も幸せにしないよねLeonちゃん?」と、奥寺先輩が言った。

私がこの質問の答えを知るにはまだ若すぎると思ったが、恋に後ろめたさを感じるのは自分だけではないと改めて確信したし、奥寺先輩はまだ誰とも付き合ったことがないと言うので私は自分の彼女へのチャンスを少し感じた。

そんな矢先、私が大学2年生になった頃バイト先は潰れることを店長から聞かされた。
閉店した夜、赤城先輩が帰り道で私を引き留めた。はじめて異性に好意を抱かれたことがわかったが、私の心はやはり彼の方を向いていなかった。
他にもっと好きな人がいるとわかった。

店の取り壊しが始まり、私は留学前に各友達に送別会をしてもらっていた。
最後に会うのは奥寺先輩と決めた。
2人で出かけて、辺りに西日が差し掛かるころ
私は日本を離れる身分でありながら、と自分の身勝手さに断りを入れながら
「ずっと好きでした。私で良ければ付き合って下さい。待っててくれますか?」
人生で初めて好意を打ち明けた。
先輩は顔を紅潮させながら「驚いたけど、ありがとう。落ち着くまで少し考える。」と言って、いつもと同じ仕草で手を振って別れた。

深夜になって奥寺先輩から電話が来た。
「やっぱり、女の子を好きになるか今わからないっていうのと国試に集中したいから。ごめん。
でも嬉しかったよ。留学頑張ってくるんだぞ!」
後悔はなかった。

世の中には「同性愛には理解の余地がない」とインターネットで主張する人もいるが、私はそれ以上に(目に見える形ではないけれど)個々のセクシャルに寛容である人、いわば「沈黙の大衆」は確実に存在すると思って、
また海を渡った先の出会いに期待して日本を飛び出した。

About the author

Leon

Leon

大学で政治学を勉強しています。
留学を経てセクシュアルマイノリティとしての自分を受け入れられるようになりました。私の記事を通して自分のセクシュアリティに気づくきっかけや、セクシュアルマイノリティの中の1人の考えに触れてみる機会を提供できたら幸いです。

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