カミングアウト 体験談 連載

自分を肯定できるようになったまで(高校編)

自分を肯定できるようになったまで(高校編)
撮影者: Leon

「もしかして女の子が好きなの?」と母に言われることがたまにある。

「恋愛の話はあんまり人にしないから」と答えることにしている。答えになってないが。

日常の会話でホモセクシュアルであることを嘲るやり取りに笑いが起こることがある。
まるで異性愛が正解だとでも言われてる気持ちになる。

テレビではオネエキャラを売りにするタレントを目にすることが多い。彼(女)の多くはあくまで男の身体で女に扮して面白いことを言うことを求められているように思う。
個人のセックスとジェンダーの差異はマジョリティから面白がられていい存在なのか。
ずっとモヤモヤしていた。
高校で出会ったふみ(仮:筆者が二階堂ふみちゃん推しなことによる笑)は、女の子も好きになるという私のありのままを3年間で支えてくれた。

ふみは部活で一緒だった。
練習は厳しかった。あまりのハードさに私は1度入院した。私が復活したときふみは涙目でハグしてくれた。私は家族以外の他人からハグをされたのが初めてで、すごく細くて良い匂いがして幸福感でいっぱいになった。
しかしその離脱も「だらしがない」と責められるような環境に居た。その辛いときに目の保養となってくれていたのがクラスの女の子だった。ふみは女のアイドルが好きというのでその私のアイドルのことを話すと「女の子っていいよね。ドキってしちゃうのわかる。」と言われた。ふみにはその時彼氏がいたが、自分の「好き」を始めて理解してもらえた気がした。

次の学年になって私は夏に念願の語学留学をした。そのことを部活に理解されず、日本に帰国して孤独な日々が続いた。ふみだけが影で私の味方だった。アミダクジで私が大会の組み合わせ抽選に行くことに決まり、この時人生で一番死にたくなったが、ふみも彼と別れてレギュラー争いと親の大学受験へのプレッシャーで押しつぶされそうということを聞いて、この時から私はこの人の特別な存在になって支えたいと思った。ここから私の20年の人生、野球に例えると初回から制球が安定せず先発が4回5失点KO打線沈黙だったのが7回裏から猛攻を迎えることとなる。

私は好きな人と幸せになるために死ぬ気で練習した。
運命的に、頑張れば大事な大会で勝ちぬけるクジを引いた。
そして私は大活躍を続けて大会を勝ち、県最優秀選手賞を貰った。
好きな人のための力で周りに認めてもらえた。好きな人は一番喜んでくれた。彼女と一緒にいて向こうも私を受け入れてくれているだけで幸福になれた。
こうして私の人生は7回裏の攻撃で点を返したものの、甲子園には魔物が住んでいることを忘れるべきではなかった。

受験生になった。私たちは部活を辞めなかった。最後の大会はあっけなく引退し、私はふみと週1コマだけの同じ授業でしか会えなくなった。彼女がその授業に男の子と移動してくることにモヤモヤした。私は好きな人への見栄・俗に言う「男のプライド」みたいなもので勉強を続けた。ふみはたまに会うと「あたしに会えなくて寂しかったでしょ?」「あたし見るとニヤニヤするのすぐ分かるからね。いい女って結構そういうのに敏感だから。」と言って私をからかうのが好きだった。彼女の仕草や容貌が少女から女性に会うたびに変わっていくのにハッとさせられていた。
夏休み後の文化祭は部活のみんなで回るはずが、ふたりきりになった。人ごみの中で手を握られた時には全てがスローモーションになった。
いつもの夏の終わりと違って長い髪と白い肌を私に見せる彼女は、一層大人びていた。それもそのはずだった。
「あのね、聞いて。」彼女は夏の初めに新しい男と付き合い始めていた。

私の心は3日ほどショックで死んだ後に全てを勉強に捧げるようになった。
コートを着る季節になった。「お昼、中庭ね」私が推薦入試ばかりの友達付き合いに疲れてるのを気遣っての言葉だった。卒業までのカウントが続く中、私たち二人だけ輪を離れてねるねるねるねを作って遊んだりしていた。時間を止めたかった。

私はそうして夢のまた夢の存在だった有名校に合格した。ふみは浪人した。
次の年、ふみは志望校に合格して私は1年留学をして、連絡はしていたけど普通に会えるようになったのは今年の話だ。

突然、「次の週末、親いないんだけど泊まりに来る?」と連絡が来た。
こういう言葉は自分の好きな人のために取っとけ、と思ったが自分がある意味ではその資格を持っていることが嬉しかった。
ずっと会ってなかったのになんでもない話ばかりして笑った。
ふとした沈黙で6年目分の覚悟を背負って「知ってたかもしれないけど、ふみをずっと好きだったよ」と、口にした。
必要だった気がした。「ありがとう。」なんでもない返事で、私が私で良いっていうことを教えてくれている気がした。
それから私がつまんない女に引っかかってきた話をした。彼女は笑っていた。

「今の彼とだったら、結婚できる?」

「このままいけばね。もう3年経つからさ。」

今でも「あたしのこと、好きなんでしょ?」とたまに真面目か冗談か分からない雰囲気で聞いてきた高校生のふみを思い出す。
いつも恥ずかしくてうやむやにしていたけど、一度でも「好きだよ」と勇気を振り絞って言っていたら、と思う。
でも、告白や交際を通さずとも、彼女が私の3年間とその後を幸せにしてくれたことは変わらない。だから彼女には心の底から幸せになって欲しいと思っている。

About the author

Leon

Leon

大学で政治学を勉強しています。
留学を経てセクシュアルマイノリティとしての自分を受け入れられるようになりました。私の記事を通して自分のセクシュアリティに気づくきっかけや、セクシュアルマイノリティの中の1人の考えに触れてみる機会を提供できたら幸いです。

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