性別違和 資料・情報 連載

私が性同一性障害(MtF)と診断されるまで(後編)

私が性同一性障害(MtF)と診断されるまで
撮影者: オータ

性同一性障害(MtF)の診断を受けたのは前編で書いた通りです。その病院でいただいた診断書には以下のように書かれていました。
“ 病名:性同一性障害(MtF)
世界保健機関(WHO)によるICD-10のガイドラインに則って上記障害と診断する。
性自認は女性であり、終生変わらないと考えられる。”

ここで述べられているICD-10とは、WHOが病気の分類をまとめたものです。『ICD-10精神および行動の障害 : 臨床記述と診断ガイドライン』によると、青年および成人の性別違和の診断基準として、
「A.その人が体験し、または表出するジェンダーと、指定されたジェンダーとの間の著しい不一致が、少なくとも6か月、以下のうちの2つ以上によって示される。
(1)その人が体験し、または表出するジェンダーと、第一次および/または第二次性徴(または若年青年においては予想される第二次性徴)との間の著しい不一致(中略)
B.その状態が臨床的に意味のある苦痛、または社会、職業、または他の重要な領域における機能の障害と関連している。」とあります。

前編で述べた自分史の提出や診察による生活歴の聴取は、その人が診断基準に合致するかを調べるために行われるようです。私の場合は、幼少期から大学入学に至るまでのライフステージ毎に性別への違和感を覚えたことを箇条書き形式で書きました。例えば、七五三や制服など男性のものを着せられたことへの不快感、自分の体や声への嫌悪感があり、男性として扱われることが苦痛で、大学にも女性として通いたく、女性として就職したいと考えていることを伝えました。当時、付き合っていた女性がいたのでそれも伝えましたが、性的志向は性自認とは関係なく、MtFレズビアン、つまり心が女性でも女性が好きな人はいるとのことでした。

診断を受け、“障害”という文字に少し衝撃を受けたものの、病気だったら認めてもらえる、病気なら気の持ちようでは変えられないから仕方がないし、周りの人にも受け入れてもらえるのではないかと感じ、嬉しく思ったのも事実です。

とはいえ診断基準が決まっているのなら、なぜ病院を変えただけで診断が下りなかったり、下りたりするのか疑問に感じ、医師に伺ったところ、日本精神神経学会が作成した『性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン』の位置づけや診断への慎重さが人によって異なるからだそうです。ガイドライン自体にも「ガイドラインはあくまで医療者に対する治療指針であり、治療を受ける者に厳格に強いるべき規則ではない」と記述されており、診断まで慎重に何回も診察を重ねる医師もいれば、1回で診断を下す医師もいる状態になっています。

だから1件目の病院で診断が下りなかったのは、自分が診断基準に合致していなかったからとは必ずしも言えないのですが、その時は、自分の問題だと考えてしまいました。診断がつかなくとも、当然ずっと抱えてきた性別への嫌悪感が消えるわけではなかったので、心と体の性別のギャップを解消するためには、やはり心を体に合わせるべきであり、女性として生きたいなんてただの異常性癖ではないかと悩みました。心は体と違ってどんな優秀な医師でも目で見ることは出来ないので、心の中でどう思うかなんて自分で決めればいいと今なら言えるのですが、当時はトランスジェンダーと名乗ることすらおこがましいと考えていました。

また、私は診断を受けた病院で、ホルモン注射をしてくれる病院を教えてもらいましたが、診断を受けていなくても注射をしてくれる病院もあるようです。ガイドラインに反している上、副作用や不可逆的な変化があるので安直に勧めることは出来ませんが、もし診察を受ける前の私が知っていたら、そこまで診断に執着することも無かったかなと思います。

私自身は、2週間に1回のペースで女性ホルモンの注射を受けており、大学を卒業するまでに性別適合手術を受けるつもりなのですが、大学のセクシュアルマイノリティサークルで、性別違和感を持つ当事者の中でも、診断を受けていない、生まれたときと反対の性になりたいとまでは思わない、ホルモン療法・性別適合手術は望まないと考える人が一定数いることを知りました。生まれ持った性に囚われずに生きたいと願いながらも、性同一性障害ならそれらしく行動するべきだと考えて、結局のところ生まれてきた性別に縛られていたのは他でもない私だったのかもしれません。

もっと早くに診断を受けていれば、今頃もっと自分の望む形で過ごせていたのではないかと思う時もあります。しかし、回り道をしながらでもトランスジェンダーや性同一性障害に対する自分自身の偏見や先入観に気づくことが出来たのなら、そう悪くはなかったのかなと正当化しているこの頃です。

<参考URL>
性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第4版)
https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/journal_114_11_gid_guideline_no4.pdf

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momiji

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トランスジェンダー(MtF)の大学1年生。都会に憧れて上京。
毎日試行錯誤の連続です。

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